2008年4月以降の事業年度から適用されることになった金融商品取引法に基づく内部統制制度。(別称:J-SOX法(ジェイ-ソックス法))。当初は実務対応ノウハウが不透明なために業界全体が迷走した感がありましたが、すでに上場企業各社は毎期の運用評価対応をしており、“ある程度”は対応方法が明確になったと言えます。
ここで“ある程度”はと強調している理由は、未だに内部統制について正しい知識を持つ人が非常に少なく、また制度の本質的な狙いをクリアし切れていない状況が事実としてあるからです。制度自体も、まだまだ実務対応に則した改訂がなされている段階にあり、今後も改訂され続けるものだと思います。
一方、これから(又は現段階にて)IPO(株式公開)を目指している企業においては、IPOプロジェクトの最初の段階で証券会社や監査法人等から内部統制導入が求められる環境にあります。その理由は、内部統制導入によって幅広く社内管理体制を整備することができるため、その後のIPO準備を効率的に進めることができるからだと言っても過言ではありません。(一昔前は、監査法人側が、上場が困難な企業のIPOプロジェクトを足止めするためのエクスキューズとして内部統制対応を迫る場合もありましたが。)
つまり、これからIPOを(株式公開)を目指したい企業にとって、最初の関門が内部統制であり、社内管理体制が“上場企業として”の観点からはまだまだ不十分な段階で数多くの制度をいきなり導入しなければならない状況を強いられるのです。少なくともIPOを達成したい年度から逆算して5,6年前には内部統制制度の導入を始めざるを得ないのではないでしょうか?
影響としては、この内部統制制度導入によって企業の負担・問題点が増加していきます。
1.内部統制対応にコスト負担が大幅に増えます。
2.数多くの新規制度を不用意に導入することで迅速な経営判断ができなくなる。
3.従業員の内部統制への理解が浅く、社内調和が乱れる可能性がある。
1.については、まず監査法人や証券会社、コンサルタント会社への多額の報酬が毎期発生してしまうこと、さらに内部統制担当者の採用や養成といったコスト負担が発生します。ベンチャー企業でも1000万円~3000万円程度のコストアップは免れないと思います。
2.については、経営判断に至るまでの協議・審議のプロセスに十分な牽制機能が必要なため迅速な意思決定ができなくなります。また、リスク管理会議やコンプライアンス委員会の設置、内部統制担当部門の設置によって下手をすれば相当数の会議をこなさなければなりません。
3.については、IPOについても理解し切れていない従業員が多い中、さらに新しい内部統制というキーワードを掲げて新規制度を数多く導入することになるため、作業が増えたり、本当にIPOができるのか不安に感じる従業員からの不満の声が出てきます。(この不満の理由の大半は、形式的な制度導入だけして、実質上は何も変わらないことに対するものが多いですが。)
いずれも上場審査においては、上手く昇華して負担・解決しておかなければならない問題ですが、これからIPO(株式公開)を目指そうという段階の会社にとっては相当な負担になることは間違いありません。このような問題によって、経営自体が危ぶまれる企業も数多くあります。
そのような事態を極力避けつつも、IPO(株式公開)を目標に見据えて最短距離を進むためには、経営者自身がまずは内部統制をしっかりと理解し、経営方針や事業戦略に落とし込んだ事業計画の立案、全役職員への周知徹底が不可欠となってきます。
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2011.11.13 石井真人